戦 場



何も痛まない。
悲しむこともない。

やらなければ、こちらがやられるだけなのだから。

張り付いたように、トリガーから離れない指。
力を込めた瞬間、閃く光弾。
辿りつく先に待つのは、命の終わり。

人と思うな。
人と思うな。
言い聞かせて、トリガーを引く。

死ねばいい――と最初に願って。
踏み込んできたのは向こう。
死にたくはない――ただそれだけ
生きるために、守るために抵抗する。
それだけのこと。
大義名分なら……。
こちらには、いくらだってある。

すれすれで掻い潜り、交わしながら
マシンのようにトリガーを引き続ける。

消えていく命。
消えていく感情。

光の数だけ。
人でなくなっていく気がした。
生きて。
生き延びてついた吐息の数だけ。
人でなくなっていく気がした。

何も痛まない。
悲しむこともない。

私はもう私ではないのかも知れない。







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