BODY TALK
彼女を前にして、僕はいつになく饒舌だった。
けれど彼女は――。
僕が彼女について熱く語れば語るほど、寡黙になってゆく。
微笑んではいるけれど、その瞳は何故か淋しげに揺れている。
僕は不意に黙り込む。
どうしたの?
たまらなくなって尋ねる。
すると彼女は――。
軽く目を伏せて、静かに言った。
足りないわ。
100万回「愛してる」って言われても、言葉だけじゃ足りないわ。
僕は、ぽかん――と口を開けたまま彼女を、ただただ見つめる。
わからない?
今度は彼女が僕に訊く。
困り果てて僕は、頬をかく。
すると彼女は小さく微笑んで、僕の頬を両手で包み込んだ。
どきり――とする。
彼女の唇がスローモーションのように動いて、僕に囁いた。
こういうことよ。
彼女の唇が僕の唇をとらえた。
身動きができないくらいの濃厚なキス。
体中を電撃が走る――というのは、このことだったのか。
僕は急性の熱病にでも罹ったかのように
頭のてんぺんから爪先までが熱くなる。
情けなくも僕は、成す術もなく、その場に立ち尽くす。
彼女は。
今度は僕の耳に唇を寄せて囁いた。
100万の言葉より、ただ愛して欲しいわ。
あなたのすべてで、私を愛して。
僕は。
首筋から彼女の細い腕を解く。
そして今度は――。
僕が彼女を見つめて尋ねる。
こんなふうに?
キスにはキスで。
僕は想いを伝えよう。
僕だって、キミへの想いは言葉なんかじゃもどかしい。
だから――。
だから――。
キスだけじゃ足りないよ。
僕のすべてでキミへの想いを伝えよう。
全身全霊を込めて。
キミのすべてを愛しながら。
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■ちょほいとヒトコト
これは、あいさんのサイトに送りつけたもので、もとはタイトルついてませんでした。(笑)
「BODY TALK」 なるシャレたタイトルは、あいさんに付けていただいております。有り難うございます♪
ワタシが書いたものとしては珍しく?ラブラブ度の高い作品に見えるんですけども、(笑)ホントのところは、ちょっと違うんです。
古代君はカン違いしてるんですが(笑) 女側の気持ちとしては、けして艶っぽい話じゃないんですね。
愛を表現する言葉をいくらもらっても、抱きしめ合っても、ふっと湧きあがる不安や淋しさ――とでも言いましょうか。
彼女からすると、ただ、こうせずにはいられなかった――っていう微妙で繊細な想いですかね。
もっとも古代君の方は、色っぽいお誘いを受けたと思って、ただただシッポ振って喜んでるんでしょうけどもね (笑)
下の詩(っていうのかな)は、コレの原型。
例によってタイトルないですけども。
短いですし……ね。
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着飾った言葉たちが踊る
あなたの心を隠すように
きらきら……
心にもないことは歌わないで
ただ愛してよ
百万の言葉より私を
ただ愛してよ
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余計なセリフとかがないので、原型のヤツの方がわかりやすいかも知れないですね。
但し、古代君は歯の浮くようなセリフで女の子を喜ばせるようなマネはできんでしょうし、雪のことは愛して愛して愛しちゃってる(笑)でしょうから
こっちの詩の男の影とは、ちょっと違いますけどね。