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ゲスト:50000カウンターゲッター さとみ様




  比翼の鳥、連理の枝




その日は――。
森雪の二度目の月忌命日だった。

彼女は。
ガトランティス戦を宇宙で戦った、ただひとりの女性だった。
結婚という幸福を目前に控えながら叶えられることなく、戦いばかりの日々を明るく気丈に、駆け抜けるように生きた。
そんな彼女の早過ぎる死を、誰もが悼み、その墓前に多くの人が足を運び、皆、涙した。



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<1>


森雪の墓参りをすませた後、島大介と南部康雄、相原義一と太田健二郎の四人は、英雄の丘のふもとの海の見える小さな広場の一角で佇んでいた。
在りし日の彼女を追想しながら、言葉もなく。
冷たい海風をただ一身に受け、静かにそこに佇んでいた。


彼女だけでなく、多くの仲間を失ってしまった四人。
誰の心も未だ癒えることはなく。
その悲しみは、心の底に暗く冷たく根を下ろし、なお深くなるばかりだった。



「古代進っていただろ?」

ふと。四人の耳に届いた声に、よく知った名を聞いた。

声は、彼らのすぐ脇のベンチからだった。
話しているのは同年代の二十代前半と思しき、やや軽薄そうな茶髪男であり、友人らしき気の弱そうな小柄な男が、半ばうんざりした様子ではあったが、聞き役となっていた。

「俺が思うにさ。古代進って男はどこまでも非常識極まりない男だよ。」

茶髪男の言葉に、四人はハッと顔色を変えた。
気づかず、男は得々とした様子で友人に語っている。

「ヤツは結果として地球を救った英雄みたいになってるけどさ。俺は納得いかないな。
平和主義だか博愛主義だか知らないけど、正義の味方ごっこでもしてるようにしか見えなかったね、俺には。
あんなの、単なる青二才さ。
それにさ。巷じゃ悲恋、悲恋って言ってるけどさ。婚約者の森雪…だっけ?あのコもとんだ災難だったよな。
俺が聞いたハナシじゃ、彼女の母親、あの男との婚約には反対だったらしいぞ。
そもそも軍人は嫌いだったってさ。
才女だって割には、なんであんなのに引っかかっちゃったかな?惜しいよなあ。
やっぱり、アレかな。ともに生死を潜り抜けたりなんかしちゃうと妙な感情が生まれたり湧いちゃったりするもんなのかな。
なんか、つまんねえ女どもがさ。どいつもこいつも、あいつらのことを相思相愛でうらやましいとかなんとか言っちゃってさ。バカじゃねえの、って思うわけ。
中にはあやかりたいって言う大バカもいるじゃん?
でも、結局はその程度のモンだと俺は思うね。
別に古代みたいな男じゃなくても、家柄とか経済力とかさ。
そのへんのところ、しっかりした相手の縁談なんて、あのコのレベルならいくらでもあったんじゃねえのかなァ。ホントにもったいねえよな。」

勝手なことを知ったように話す茶髪男に激しい怒りを覚えた島が、奥歯をギリギリと鳴らし、拳をぎゅっと握り締めたその時。
パン!という乾いた音がした。

「え…?」
四人は一斉に音の方を見る。

隣りのベンチにひとりで座っていた娘が、男の前につかつかと歩み寄ったかと思うと、いきなり、頬を張ったのだ。

「なっ!何をするんだ!」
突然のことに男は驚き、頬を押さえて叫んだ。

娘は怯むことなく男に詰め寄り、上から見下ろすと、声を張り上げた。
「最低な男ね、あんた!これ以上、親友を侮辱したら私が許さない!」

「はあ?なんだと!?」
男は叩かれた頬を押さえたまま立ち上がった。
気弱な友人が、女相手によせよ、とシャツの裾を引っ張ったが、男は怒りに満ちた目でその手を振り払った。

娘は一歩も退かず、更に言葉を継いだ。
「確かに古代進って男は女の子に対しちゃ、呆れるほど不器用で気の利かない男だったって私も思うわ。
ただ…。ただね。それを除けば、古代進って人は雪に、あの子自身にとてもよく似てる人だった。
もしも雪が男に生まれていたら彼だったかも知れないって思えるくらいに。
あの子達のこと、身近に見ていた私には…ふたりは出会うべくして出会ったんだって、自然にそう思えた。
古代進って人はね。雪の、あの子の半身みたいな人だったのよ。」

しかし、男は。
強気の娘を鼻でせせら笑った。
「フン、親友だかナンだか知らないが、黙って聞いてりゃ何を少女マンガみたいなこと、ぬかしてんだ?お笑いぐさだな。
あんたの言うように彼女の方があの男に惚れこんでいたとしても、惚れられてる当の本人が、目前だったっていう結婚式をすっぽかした上に、死なせちまってるワケだろう?
誰が聞いたって、なんとも酷くて報われない話じゃないか!
そんな風に死なせちまっといて、せめて男の責任として婚約者の遺体を家族のもとに返すくらい、すべきじゃなかったのか?
俺だったらそうするね。
それがあの男、最後まで彼女を離さなかったっていうじゃないか。
世間じゃ美談めいて語られちゃいるが、そんなの、ヤツのエゴ以外のナニモノでもないだろう?
結局、ヤツも意気地のない、ただの男だったってことさ。
まったく、大した英雄だよ、古代って男は。
そうでなくたって、あの男が己の青臭い平和主義やら正義心やらを振りかざしたおかげで、同じ穴の狢とはいえ、大勢の人間が死んでいるんだぜ?
ヤマトで特攻をかけるなら、最初からひとりで行きゃよかったんだよ。」


男が自分の言葉に酔いしれたように胸を張った時、娘の脇から、ぬっと人影が現れた。
と、次の瞬間。
「ぐがっ!?」
という声と共に男が大きく仰け反った。
顔面に激しい衝撃。
男は自分に何が起きたのかわからなかった。



<2>


男は左頬を派手に殴られていた。
堪えきれなくなった島が、ついに飛び出したのだ。
そして、男の頬を思い切り殴りつけていた。
「この野郎!!黙って聞いてりゃ、調子に乗りやがって…。」

「くうっ…!いってえ…!な、何しやがンだ、こンの野郎っ!!」
男の方も見知らぬ相手にわけもわからず殴られるのは理不尽と、鼻血を噴き出し足をふらつかせながら、殴りかかってきた。

「うぐっ!!」
島は男の拳を左頬に喰らった。
唇が切れ、深紅の血が滴り落ちる。
が、それで。
怒りのボルテージが更に上がり、島は叫び声を上げながら、すぐさま報復にかかった。
「こんちくしょおぉーーーっ!!何も知らないクセに!何も知らないクセに!ワケ知り顔で、すかしてんじゃねえーーーっ!」

男の顔をもう1発、2発と殴りつける島。
鍛え上げられた島と茶髪男との力の差は歴然で、このままでは危険とみて相原が止めに入った。

「おい、よせ!やめろ!もういい!やめるんだ、島っ!」

しかし、あまりの怒りに歯止めのきかなくなった島は、相原を薙ぎ倒し、再び男の胸倉を掴んでギリギリと締め上げた。
男は、もはや恐怖で悲鳴すら上げられないでいる。
とにかく引き剥がそうと太田と南部がそれぞれ島の腕を押さえ込んだ。
島はそれもまた振り解こうと更に暴れる。

「離せ!離せよ、太田!邪魔するな、南部!俺は許せない。許せないんだよ、ああいうクソみたいな野郎はなぁーーーっ!!」
島は太田と南部に羽交い絞めにされ、動きを抑えられたまま、男に向かって叫んだ。

「おまえ…、おまえ、雪や古代のことをそれ以上、何か言ってみろ!俺は何をするかわからんぞ!
おまえに何がわかる!おまえに俺達の…古代や雪の何がわかるっていうんだ!!
ああ。確かにあいつは青臭くて甘っちょろい理想や正義心ってヤツを持っていたさ。
だが、あいつは…古代はな。ただそれだけのために他人を巻き込むような浅はかな男なんかじゃない!」

「俺も同じ穴の狢の1匹として言わせて貰うが、古代は古代なりに現状を憂えていたんだと思うぜ?
防衛力を過信し過ぎている政府や軍には下っ端の俺達ですら不安を感じていたんだ。
それにな。宇宙の平和維持だの安全だのと表面的にはごたいそうなことを並べちゃいたが、結局のところ、金儲けに繋がる軍需産業の発展しか頭にないヤツらばかりが上にのさばっていやがったのさ。」
太田が、島の腕を掴んだまま、吐き捨てるように言った。

「そうさ…。俺達はあのガミラス戦で、有能な人材をあまりに多く失いすぎた。
軍はもちろん、政界にしろ財界にしろ、のうのうと残っていたのは地位や名誉を欲しているだけの、ろくでもないヤツらが殆どなのさ…。実家が軍需産業の俺が言うのも…おかしいがな。」
南部は自嘲気味にそう言って唇を噛みしめた。

「俺達は何度も要請したんだよ。調査だけでもいい、行かせてくれないか、と。
だが、あいつらはそんなことにムダな金を使いたくなかったんだろう?
そんなことに金を使うくらいなら1隻でも多く、アンドロメダのような戦艦を作って、腹の膨らむビジネスをした方がいい。そう思っていたのさ。
地球のため。宇宙のため。そんな言葉は大義名分のために過ぎなかったってワケさ。
そのくらいのこと、あんたにだってわかるだろう?」
相原は、ぎゅっと拳を握りしめながら男を睨めつけた。

「俺達は実際に宇宙にいて、何かしら不穏な空気を感じていた。そう…。現場の人間にしかわからない、漠然とした危機感ってヤツさ。
そんな不確かなものに、大事な時間や金を注ぎ込みたくないってのもわからなくはない。
だが、不確かだからこそ、あえて古代は調査に出るべきだと進言したんだ!
だが俺は…。俺はわかっていながら保身のために見て見ぬふりをしようとした。
古代は動かない上の連中に見切りをつけて、実際に行動を起こした。
何か事が起きた時、後手に回るのを未然に防ぐために、だ。」
島は自身を責めるようにうつむき、小刻みにその肩を震わせる。

南部は、そんな島の肩を慰めるように、ぽんぽんと叩くと、薄く笑みを浮かべながら茶髪男を真っ直ぐに見据えた。
男とその友人は、怯えたように後ずさった。
「地球はヤマトたった1隻でガミラス本星を屠ったと、それまで滅びの恐怖に打ち震えていたのが一転、何者をも恐れない王者のような気分になっちまったんだろうな。
俺達がどんなに訴えても危機感のかけらもありはしなかった。
それどころか…。イスカンダルから得た科学力が無敵だとでも思っていたんだろう。
ガミラスにあれだけの目に遭わされていたのに…。あれだけの犠牲を払ったのに…。
あいつら、まるで無かったことみたいに言いやがって…。
いろいろ理由をくっつけてはいるがな。俺達を反逆者とみなして必要以上に騒いだのは、敵対する派閥を抑えるためでもあったんだぜ。
俺達はある意味、利用されてたってワケさ。」

南部の話を、うつむき黙って聞いていた茶髪男達に、つと相原が近寄り、拭けよ――とばかりにハンカチを差し出した。
そして、南部の話を引き継いだ。

「だが、現れたのはガミラスどころじゃない、邪悪と言っていいほどの侵略者だった。
自分達を無敵だと思ってた一部のヤツらには番狂わせだったろうな。
ヤマトを出さずにあのまま…、何もせずにあのまま…。
波動エネルギーを過信して、彗星帝国との戦いに臨んでいたら…。
ご自慢の無敵艦隊があっさり全滅しちまったことだけでもわかるだろう、あんたにも。
自分達を正当化するワケじゃないが、俺達地球人は奴隷にされるか、嬲り殺しに遭っていただろうな。
……つまらん過信のおかげで、尊い命が、ただごっそり奪われただけだったんだ。
だが、あいつらはホントに変わり身が早い。さっさと翻ってヤマトを英雄に祭り上げることで、己の無能さをなかったことにしてやがるんだからな。大したもんさ。」

四人の様子を傍らで黙って見守っていた娘が、突如、つかつかと歩み寄り、南部と相原を横に押しやった。
そして茶髪男の前に立つと、両肩をぎゅっと掴んだ。

唖然とする四人。
そして、逃れようとみじろぎする男。
しかし娘は、掴んだ男の肩を離そうともせず、叩きつけるように叫んだ。

「そんなこと…。そんなこと、どうでもいい。この人が、この人が古代君を侮辱するのは雪を侮辱するのと同じことなのよ!
雪が、どれほど彼のことを好きだったか。どれほど愛していたか。知っていたら…知っていたらあんな酷いこと、言えない!言える筈がない!!
確かに…。
あの子を連れていってしまったのは、古代君の最大のわがままかも知れない。
でも、でもね。あの子を幸せにしてやれなかった、守ってやれなかった古代君が、どんな思いであの子をそばに置いたか、どんな思いで逝ったか、私にはわかるわ!
たぶん彼は…。どんな時でも何があっても彼のそばにいたいっていう、雪の…あの子の想いに応えたんだと思う。
確かにね…。あなたの言うように、例え亡骸となってでも帰って欲しかっただろう御両親の気持ちを思ったら…酷いことだと…私も思うわ…。
だけど、そうだけど!なんにも知らない、あなた達みたいな人が!古代君や雪のことをワケ知り顔で語ったりなんかしないでよ!
彼にとっても雪は!古代君にとってもあの子は!半身のような存在だったのよ!
あなたは笑うかも知れないけれど、古代君と雪は…。そうね…。比翼の鳥であり、連理の枝あり…そういう、そういうふたりだったのよ。少なくとも、私の目には、私の目にはそう映ってた!!
謝りなさいよ、雪に!あなたがあの子のこと、心から思ってくれるのなら、謝ってよ、雪と古代君に謝ってよっ!!
それに…。ふたりの仲間だった、誰よりも理解してくれていたこの人達にも!この人達にも謝ってよっ!!」

娘は男の胸を両の拳で力いっぱい叩くと、そのままゆっくりと崩折れてゆき、地面に蹲って嗚咽した。

茶髪男は血だらけの顔をうつむかせ、相原に渡されたハンカチをぎゅっと握り締めたまま、足元の彼女をしばし見つめていた。
そして呻くように口を開いた。
「う…ぐ…。すまない…。き、聞いていたのは噂話に過ぎなかったのに…。知りもしないのに…。俺、俺は。…言い過ぎだったと思う。
亡くなられた古代さんや、も、森さんに対して、いや…ご遺族やご友人に対しても…申し訳なく思います。
ホントに、ホントにすいません…。すいませんっ。すいませんっ!!」

男は友人とともに娘と島達四人に対して、深く頭を下げた。
涙声での、心からの謝罪だった。
そしてふたりは肩を落とし、うな垂れたまま、その場から逃れるように立ち去った。


間もなく。
泣いていた娘も、ゆっくりと立ち上がり…。
唇を噛みしめたまま四人に小さく会釈すると、言葉もなく去っていった。


残された四人は、ただぼんやりとその後ろ姿を見送った。



<3>


「ほらよ。冷やしとけ!」
南部が島に向かって濡れたハンカチを投げてよこした。
島は無言のままそれを片手でキャッチすると、腫れた頬と唇に押し当てた。

「バカだな、おまえも。」
太田が苦笑しながら言った。

「うるせえよ…。イテテテ…。アイツのパンチ、結構、効いちゃったよ…。」
島は口を尖らせ、もごもごと言った。

「しょうがねえヤツ…。」
相原が困ったように肩をすくめた。

「でもまあ…、あの時、おまえが行かなきゃ俺が行ってたしな。」
そう言って南部がニヤリ、とし。
ふんっ、と鼻を鳴らして島の口角が持ち上がった。

「でもな…。アイツの言うことは間違ってもいないんだよな。」
ふと、南部が呟く。

「それは…。それは俺も思ったよ…。」
太田が吐息交じりに下を向く。

「あのあと…。」
ふと、島が顔を上げ、ぼそり…と言った。
「実はあのあと、3日後くらいだったかな?雪のオヤジさんに、偶然ここで行き会ってさ。少しだけ話をしたんだ。」

「あのあと?あのあと、って…」
いつのことかとしばらく考えて、南部は「ああ…。」と顔を上げた。
「そうか…。帰還して間もなく、おまえ、雪の家に行ったんだったな。」

「ああ。俺、あの時、ひとつだけ伝え忘れてたことがあってさ。

あいつに…古代に『雪の家族に会ったら伝えてくれないか。』って言われてたことがあったんだ。」

「俺、初耳だぞ?」
「俺も。
「俺もだ!」
一同が一斉に島を見つめた。

「『雪を連れて行く自分のわがままを許して欲しい。』ってさ。そう伝えてくれって、あいつ、言ったんだよ。
辛かったよ…。あいつの口からそんな言葉が出るとは、正直、思ってなかったからさ。
俺はあの時、頷くことしかできなかった。ただ、ふたりでいさせてやりたかった…。」

南部は島の話に、困ったような笑ったような顔になった。
「そう、か…。古代のヤツ…そんなこと言ったのか…。あいつ…必要以上に自分の気持ち、押し込めてたからな。
さっきのコ、古代が雪の想いに応えたんだって言ってたけど、きっとあいつ自身、雪の傍にいたかったんだろうな…。
俺、わかるよ…。あいつの気持ち。
確かに雪の身内からすれば身勝手なことなんだろうけど…。
きっと俺からも、どうしろこうしろとは言えなかったと思うよ。」

「ああ…。けどな。オヤジさん…、古代が雪を連れてっちまったこと…恨んでなかったよ…。」

「そう、か……。」
三人は黙り込んだ。

「むしろ、それでよかったんじゃないか…ってさ。
……オヤジさん、本心からそう言ったのかどうかは、わからんけどな。」

「そう、だな…。」
涙ぐんで相原が鼻の下をこする。

「逆に…。雪が死んだことで古代に決意させてしまったんじゃないか、なんていうからさ。
俺、なんて答えたらいいかわからなかったよ。
仮に死なずにいてくれたとしても、どのみち、雪のことだから古代とヤマトに残っちまっただろう、ってさ。
ウチのはそういう性分だ、って。やっぱり、こうやって娘を送っていただろうってさ。笑ってた…。
…どうにも、やりきれなかったよ。」

「そうか。辛いな…。」
四人はそれきりうつむいて、夕暮れの海風に吹かれた。


「それはそうと。あれ、威勢のいいコだったなァ。」
ふと。
重く沈んだ空気を払拭するように太田が空を見上げて呟いた。

「ホントにな。俺もさァ、あの時はカーッとなっちゃっててわかんなかったけど、あの娘のこと、見たことある気がするんだよなあ。
ええと、誰だったかなあ?」
相原がそれに応え、顎を撫でながら首を傾げて言った。

相原の言葉を受けて、南部が眼鏡の位置を直しながら記憶のページをめくり出す。
「ああ、俺も会ったことがあるぞ…。ええと、あの元気な友達、なんていったかなあ。
あ!あれだよ!あの娘だよ!サトミちゃん…って言ったっけ?」
さすがは女性の名前を覚えるのを得意とする南部、娘の名前を見事に思い出した。

「ああ!そうそう!あの娘、確かそんな名前だった!しかし、なんだな。雪にあんな友達がいたんだなぁ。」
島の、しみじみしたようなそんな言い方に、他の三人は「そうだな。」と笑って互いに頷き合う。

「結構、知らないことが多いなあ、俺ら。」
呟く島に。
「そりゃそうだろ…。残念ながらおまえはアイツの彼氏だったワケじゃないからな。」
クックックッ、と喉の奥で笑いながら、からかうように南部が言った。

「……ちっくしょう!古代のヤツ!!」
島は腫れ上がった唇を尖らせて、ぼそり…と言った。

太田と相原は顔を見合わせると、どちらからともなく、ぷっと吹き出し、大声で笑い出した。

ひとしきり。
涙を流しながらの大笑いをした後、今度は四人揃って空を見上げた。

「なんだかなあ…。」
「ホント、なんだかなあ…。」
「あいつら、あっちでよろしくやってんのかなあ。」
「ちぇっ。なんなんだよ。」

「あっちはあっちで賑やか、なのかな?」
相原は微笑んだまま、ふと言ってみる。

「そりゃむしろこっちより賑やかなんじゃねえの?何しろ加藤と山本率いるコスモタイガーのアホどももいるしなァ。」
南部が苦笑いしながら答える。

「うっかり、斉藤以下空間騎兵隊の皆さんが加わってみろ!賑やかっていうより、『なんの祭?』って騒ぎだぜ?
でもって、真田さん、仕切ってそうだな。佐渡先生はどこ行っても飲んでんだろうし、それに加えて機関長と沖田艦長と土方艦長が揃ったとなりゃあ…。
うー、やっぱり…どんちゃん騒ぎかよ!間違いなく、あっちの方が賑やかだぜ、相原…。」
太田が想像の幅を広げて、げんなりと肩をすくめた。

「うへえ…。それだとちょっとイヤかも!」
相原が大袈裟に白目を剥く。

「楽しいと…いいな。」
島が微笑んで呟いた。

「ああ。そうだと、いいな。」
あとの三人も、微笑みながら揃って答えた。


古代進、か。
あいつ…馬鹿だからな。
きっと、あっちにいてもこっちのことが気がかりでしょうがなかったりするんだろうな。
でも、もういいんだ。
何も心配するな。
こっちには俺達がいるんだぜ?
あとのことは、いや、これからのことは俺達にみんな任せておけばいい。
やっとふたりきり…になれたかどうか、わかんねえけど…。
おまえは今度こそ。
今度こそ雪を幸せにしてやれよ。

じゃねえと。
じゃねえと…。
「俺の気がすまねえぇーーーーっ!」
突然、島が。
海に向かって大声で叫んだ。

「な、何言ってんだ、おまえ?」
三人は、驚き、呆れ、その横顔を見つめた。

「なんでもねえよ。」
島は、三人の方を向き、口角をクイッと持ち上げて笑ってみせた。

ふっ、と南部が笑った。
相原が頷く。
太田が肩をすくめて…。

「俺もだあァーーーーっ!」
「俺もーーーーっ!」
「よくわかんねえけど、たぶん、古代のバカヤローーーーッ!」


残る三人も――。
同じ想いを、同じ願いを。
いつの間にか瞬き出した星々に向かって、思い切り叫んだのだった。







////////// END /////////////









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■ちょほいとヒトコト

さとみさんへの「50000アクセス記念」プレゼント、ご本人様登場ストーリー、ようやく出来上がりましたです。
長いことお待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。

これまで「サトミちゃん」登場のお話は「2流れ」だったかと思うんですが、今回は「さらば~その後」なので、あまり明るい話ではなくなってしまってごめんなさいです。
あんまり、よくは言われてなかったりする「さらばの古代君」を、ちょっと擁護したくて、こんな話を作ってしまいました…。

そういえば、さとみさんが最多キリ番ゲッターさんなんですよね。
サイト開設当初からずっと足を運んでいただいておりますこと、心から御礼申し上げます。
ありがとうございます。

なかなか更新できないばかりか、何度も休止しているようなサイトなのですが、これからもどうぞよろしくおつきあいくださいね。