ROMANCE
〜 Momentary love affair or innocent love 〜




「もう……時間?」
「ああ。残念ながら。」
「……。」
「仕方ないさ。これでも時間、ギリギリなんだぞ。」
「そうだよね。」
「キミだって、多忙の身だろ?」
「そうだけど。」
「別に帰って来ない、ってわけじゃないんだから。10日後には、また会える。」
「ウン。そうだね。待ってる。」
「いいコだ。」

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やさしい抱擁と軽いキスの後。
彼が出て行くのを見送って、部屋に戻る。
しんと静まり返った、殺風景な部屋。

ふと、壁の時計を見上げると、まだ5時少し前。
(もう少し寝ていたい……。)
気だるい身体を引きずるように、ベッドルームに戻る。

「!」
ドアを開けるなり、覚えのある臭いが鼻腔をついた。
――精液の臭い。

寝乱れたベッドのシーツが、明け方まで続いた彼との激しい情事を物語る。
突如、湧き上がる羞恥心。
しかし、感情とは裏腹に身体の芯が疼く。
――まだ憶えている……。

あれだけ互いに睦み合ったと言うのに。
自分は、どちらかと言えばストイックな方だと思っていたのに。
……まったく、身体ってヤツはどこまで己の欲望を貪る気なのだろうか。
些か嗤ってやりたくなった。
ろくでもないプロフィールも含めて、自分の存在、丸ごとすべてを受け止めてくれる男の存在というのは、とても居心地のいいものだと、そんな風に感じている自分自身にもだ。

――やはり、私は母に似ているのかも知れない。
己の血を呪いたくなった。

ベッドに倒れ込む。
シーツに顔を埋める。

……彼の匂い。

再び、温もりが欲しくなる。

……らしくもない。
……私、らしくもない。
……それじゃ、どんなのが私らしい、っていうの?

どうしようもない淋しさと虚しさに喘ぎながら、逃れるように毛布を被る。

眠りにつくとき。
彼女はいつも小さく背を丸め、両膝を胸に抱え込む。
さながら胎児のような姿になって。
そうやって無意識に。
彼女が孤独と不安とをやり過ごそうとしているのだろうと、彼は思っている。
だから。
彼は、そんな風に眠る彼女を、いつもそっと背中から抱き込むようにして眠る。
彼女は、彼の身体の温もりとやさしさを彼女のすべてで覚えている。

ずっとずっと、片時も離れずに彼の傍にいたい……。
彼女は願った。心から。
でも、どこかで。
ふたりの日々は儚く、とても短いものかも知れない、と予感していた。

だから――。

いなくならないでよ。
傍にいてよ。
1分でも1秒でもいい。
少しでも長く一緒にいたいのに。
こんなにもあなたが必要なのに……。


……って、なに?
……私?
……らしくない。
……らしくない、私。
知らなかった。
こんな私、知らなかった。

恋をしているから?
愛しているから?

それとも……。
淋しさゆえ、のこと?


他人よりも、強く生きてきたつもりだった。
それがこの有様だ、と彼女は自身をせせら笑った。
母とは違うのだと、そう言い聞かせて歩き出したというのに。
結局、母と同じだと思った。
だからこそ、わかってしまうのだ。
許してしまうのだ。
母の弱さを。母の孤独を。


自分も母と同じように、彼を束縛してしまうのだろうか?
彼にとって重い存在になってしまうのだろうか?

父を想う時。
きっと母はこんなふうに喘いでいたのかも知れない……。

遮光カーテンのわずかな隙間から射し込む陽光に、ふと弾かれた様に覚醒する。

――ばかみたい……。

彼女は自嘲気味に先刻までの自分を嗤って、身体を起こす。

カーテンを開けてシャワーを浴びたら――。
いつもの私に戻る。

――私は母ほどネガティブじゃない。

シャツの前を合わせて、窓辺に歩み寄る。
カーテンを開ける。
すると。
朝の光は目映く容赦なく飛び込んで、部屋を照らした。

窓を開ける。
ひんやりと涼やかな風と澄み切った青空。
やわらかな日射しが招くように、誘うように彼女を照らす。

彼女は。
静かに微笑んだ。

恋、と呼べるのかどうかわからない。
ましてや愛と呼べるようなものじゃなくても。
ただ、淋しさゆえのことかも知れなくても。

私は彼が好き……。
ただ、それだけ。
だから会いに行く。
傍にいる。



今はそれだけでいい……。





/// END ///






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<ヒトコト>
名前は出てきませんが、誰と誰なのか、わかりますよね?
あ、残念ながらヤマトキャラではないです。
オリジナルキャラクターのみの話――ということで裏掲載。
まあ、18禁ってほどじゃないと思いますが……。
これでも私にしてはかなり「せくしゅある」な表現しちゃってますんで、やっぱ裏だよな、と。