◆◇ Epilogue ◇◆



煌びやかな街から戻って――。

3人は、部屋でとにかく大盛り上がりだった。
何より古代は、あんなに弾ける雪を見たのは初めてだった。
同性の友達といる時と、自分とふたりでいる時の顔は、斯くも違うものなのか?――と感心するやら呆れるやら。
とにかく、新しい発見であった。

涼の、謎のコネクションのおかげで、高級ワインを更に2本、ゲットし、それを空にして。
その後、ビールで乾杯し、仕上げのように酒をあおると、さすがに3人ともすっかり出来上がり、見事に床に転がった。


ずがーっ。ずごごごっ。
すぴー。すぴー。
くかーっ。くかーっ。


激しいイビキが1つ。
やや荒めな寝息が2つ……。
とっ散らかったままのリビングに響き渡る、やかましく、すさまじい競演。



やがてして――。

酒量が一番少なかった雪が、ハッと目を覚ました。
見上げた時計は、午前3時を過ぎている……。

(やだ……。酔っ払って床で寝ちゃったんだ、私達。)

でも。
自分の身体に毛布が、そして、向かい側の古代にも毛布が掛けられている。

誰が掛けてくれたんだろ?
古代君かしら?それとも、涼ちゃん?


あ。そう言えば……涼ちゃんは?
涼ちゃん?

隣りに転がっていた筈の涼がいない。
部屋を見回したが、やっぱり彼女の姿がない。

トイレ、かな?
あ……。まさかまた――。


テーブルの上に目をやる。
すると、またもやメモが……。
雪は、それを手に取ると、古代を起こさないように、そっとキッチンへ行って電気を点けた。

(はあ。飲みすぎちゃった……。)
まずはコップに1杯、水を汲んで飲むと、雪はメモを開いて読んだ。


『なかなか会えないあんたらとしたら、ふたりきりで、もっともっと甘い時間を過ごしたかったろうに……。
なんだか邪魔立てしてしまい、申し訳なかった。
しかしながら、ワタシとしては。
実に楽しい時を過ごさせていただいた。心から感謝している。
実は、これほど楽しくクリスマスを過ごしたことがなくて。
いい想い出が、またひとつ増えた。
ワタシにとっては一番のクリスマスプレゼントになったよ。
本当にステキなクリスマス・イヴをありがとう、御両人。
そしてメリー・クリスマス!――涼』


(涼ちゃん、あなた――。)
雪の胸が、じん、と熱くなった。
思わず、ほろり、となった時。
背中にふと、気配を感じて振り返る。
古代が立っていた。

「やれやれ。あいつ、やっぱり帰っちゃったんだな。」

「ウン……。私達ふたりの時間を作ってやろうって気だったのかもね。ほら、見てこれ。」
雪は、古代にメモを渡した。

メモを読んだ古代は、くしゃくしゃと髪を撫でながら、小さく溜め息をついた。
「ったく、ガラにもねえこと――」

「ううん。あのコ、そういうコよ。」
雪が古代の言葉を遮って、首を振る。

「ああ。そうだな。あいつ……。」

しばらく、ぼんやりとしていたふたりだったが。
やがて――。
静かにお互いを見やると。
どちらからともなく手をつなぎ、ベッドルームへ足を運んだ。

ドアを開け、灯りを点ける。
と――。
ベッドの上に小さな箱が。

「何かしら、これ。」
「涼からじゃないか?クリスマスプレゼント、かな?」
「ウン、そうみたいね。クリスマス用のラッピングだもの。」
「ナンだろう?」
「開けてみたら?」
「ウン。」

箱を手に取ると……。
ひらひらとメッセージカードが落ちて、古代はそれを拾い上げた。
ツリーの形の小さなカードを開いて、声に出して読んでみる。

『朝まで頑張ってみてはどうだろう?――涼』

「は?」
古代は怪訝な面持ちで、包みを開いた。

「うっ!こっ、これはっ!!」
「なっ!なんなのよ、これはっ!!」

「あンにゃろうっ!!」

包みの中の小箱の正体は。
とあるゴム製品であった……。

ふたりは。
涼の、してやったり――という顔を思い浮かべて、ヒクヒクと笑った。


しばらく、虚脱していた古代だったが。
何を思ったか、ぐいっ、と顔を上げた。
そして、雪をじっと見つめると、にやり、と笑う。

「よしっ。神倉涼大先生のせっかくの御好意だ!使ってやろうじゃないか。な、雪?」

「えっ?何、言ってんのよ、古代クン――って、やだ、もう!」
とかなんとか言いながらも、古代に抱きしめられて、まんざらではない様子の雪。


空が白んでくるまでの間。
ふたりは、甘い甘い時を、思う存分過ごした――ということは言うまでもない。




★★★ Merry Xmas! ★★★






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