襲撃!
雪はシャーロットと共に、辺りを伺いながら車の後部座席に乗り込んだ。
「じゃ、行くぞ!」
兼良はシャーロットに向かって、やさしく微笑む。
大きく頷いて見せるシャーロット。
その肩を雪は、そっと抱く。
(さよなら、母さん。さよなら、諒さん……。)
零れ落ちそうになる涙をシャーロットはシャツの袖で、ぐいっと拭った。
涙もろい兼良は、もらい泣きしそうになりながら、運転席に乗り込もうとした。
その刹那――。
ギュン!!
「ぐわっ!!」
閃光が走り、兼良が仰け反った。
(敵――?)
「伏せて!!」
雪は、咄嗟に叫ぶと、シャーロットに覆い被さるようにしてシートに伏せた。
続けて2発、3発と発砲してくる。
ギュンッ、チュンッ!
雪は、そろり――と動いて、積んでいたレーザーライフルを手に取った。
(イヤだけど……今は、やるしかないわよね。)
スコープを覗き込む。
(敵は――)
いた。
瓦礫に潜むようにして、こちらの様子を伺っている。
1、2、3……5人?
(参ったな。1人で5人相手だなんて……。私、自信ないわ。)
しかし、距離がある。
なんとかやれるかも知れない。
雪は、ドア越しにライフルを構えて狙いを定める。
ひょい、と頭を上げた迂闊な敵兵が1人。
雪はトリガーを引いた。
命中!
ずきり――と胸が痛む。
(何も考えるな。今は――今は――)
助け起こそうとして、もう1人、飛び出す。
すかさず発砲。
これも見事にヒット!
(あと、3人。)
雪のシューティング・テクニックは、実は、かなりのものである。
自分が女であることで、足手まといになるのを嫌い、進から手ほどきを受けていたのだ。
敵は、その雪の正確なショットに怯んだのか、反撃してこない。
(今のうちに車、出さなきゃ!)
「シャーロット!絶対に頭、上げちゃダメよ。」
言いながら雪は後部座席から用心深く這い出ると、運転席のドアを開けた。
「兼良クン、しっかり!しっかりして!」
雪の声に、ぴくり――と反応する兼良。
間もなく覚醒すると、兼良は頭を少し持ち上げて言った。
「う、あ……っつ。すまん。油断、した……。」
雪は兼良の傷を見て顔をしかめる。
肩から胸にかけての銃創。
手早く止血だけは済ませたが――。
「動ける?」
「なん……とかな。」
呻くように答える兼良。
「じゃ、後ろ、乗って!」
雪は兼良を庇うように銃を構える。
彼がなんとか後部座席に這い登るの見届けると、自分も運転席につこうとした。
ギュンッ!
バシュッ!!
再び敵からの発砲。
素早く応戦する雪。
スコープで捉えた小柄な兵士。
(子供?まさか――)
一瞬の迷いが狙いを狂わせた。
しかし、手応えはある。
相手は間違いなく負傷している。
(外しちゃった――。やっぱり私は甘いな……。でも、逃げるには充分。)
急いでシートに座り、ドアを閉めるとエンジンをかけた。
「出るわよ!」
ギャギャギャッ!!
雪は車を急発進させた。
(私のドライビング・テクニックで大丈夫なのだろうか?もし敵が追ってきて撃ってきたら――)
かすめる不安。
(何を弱気になってるのよ!!しっかりしなきゃ!!)
払い除けるように頭を振る雪。
とにかく――。
とにかく逃げなきゃ!!。
逃げて逃げて逃げて――。
早く兼良クンを診なきゃ!!
雪の、たった一人の戦いが始まった。