フォンロン起つ!


襲撃を受けた第11番惑星に最も近い位置にいた太陽系外周第6艦隊は、緊急連絡を受け、全速力で第11番惑星に向かった。
そこで敵艦隊と遭遇。激しい戦闘の末、敗北した。
第6艦隊は第11番惑星基地と共に壊滅的な被害を受けたのである。


古代進は太陽系内外防衛遊動艦隊司令の任に就き、旗艦・風龍―フォンロンの艦長として指揮をとることになった。
敵艦隊の進撃を阻止すべく、既にアリゾナとビスマルクがアルファ星、そして第11番惑星に向かっていた。

そして、これが初陣となる新造戦艦フォンロンは――。
イカルスのドックで、メンテナンスを受けながら、その時がくるのを静かに待っていた。

しかし、その艦内では全クルーが既に配置についており、それぞれが忙しく発進準備の最終チェックを行っていた。

そんな中――。
古代は感慨深げに艦長席からメインブリッジを、ぐるり、と見回した。
(フォンロン――か。このメインブリッジ……見れば見るほどヤマトじゃないか……。懐かし過ぎて泣けてくるよ。だけどあえて、この艦を「ヤマト」と名付けなかったっていうのも、なんだか俺、わかります。わかりますよ、真田さん。)


メインブリッジには、太陽系外周第3艦隊旗艦のスタッフをそのまま配していた。

戦闘班リーダーには、白色彗星との壮絶な戦いで散った、土方竜の甥の長男・竜太郎。
自分の下でみっちりしごいてきたつもりだったが、しかし、彼にこの任は、時期尚早だったか――とやや後悔していた。
19歳の若さで、戦いに散っていった、あの土門竜介と比べても、些か子供であり、冷静さに欠くむきがあったからである。

航海班リーダーには、古代の亡き親友、島大介の遺志を継いだ、弟・次郎。
彼は兄に似て冷静沈着な男だった。
しかし兄と大きく違うのは、いざという時、実に思い切りの良い操舵をする点である。
そこだけは、兄よりも寧ろ、太田に似ているかも知れない。
天才肌の兄の域には、まだまだ及ばないが、古代は、そのあたりを大きく買っていた。

異色なのは、索敵手の吉岡美歩。
彼女の亡き父は、初代アンドロメダの機関長だった。
また土方竜太郎の同期で、女性でありながら宇宙戦士訓練学校の戦闘科を主席で卒業しているにも関わらず、戦闘班に希望を出さなかったのである。
その理由は定かではない。
しかし今回は、適材適所ということもあり、古代の意向で戦闘班に所属してもらっている。

技師長には真田志郎の秘蔵っ子である、桑原悠一。
熱中すると人が変わり、真田も驚くような発想をするのだというが、些か掴み所のない男で、明るく屈託のない性格はブリッジのムードメーカーでもあった。

そして――。
ヤマトの遺児ともいうべき、面々。
砲術長には相変わらず古代に盲従している坂巻浪夫。
機関長には、既にベテランの域に達している徳川太助。
通信班リーダーには、今や古女房のようになっている、相原義一。

とにかく地球には実戦経験のある者が少なく、フォンロンのみならず、アリゾナもビスマルクも、若手に頼らざるを得ないのは、みな同じだった。
古代にとっても、戦闘の指揮を取るのは本当に久しぶりであり、戦闘経験のまったくない若いクルー達に些かの不安を抱いていた。

(考えてみれば、俺達の初航海だってそうだったんだ。大丈夫、やれるさ。)
古代は不安を振り払うように頷いた。


古代は、ゆっくり立ち上がると、艦内放送のマイクを取った。
「艦長の古代だ。総員、そのまま作業を続けながら聞いてくれ。地球に再び悪夢が蘇ろうとしている。我々は地球の平和を守るべく戦いの中に身を投じねばならない。我が艦のクルーには実戦経験のない者が殆どで、とても厳しい戦いになるだろう。しかし、我々は必ずこの戦いに勝利し、生きて地球へ帰る。以上だ。」

すべてのクルーが決意も新に大きく頷く。


土方がすくっ、と立ち上がり、揚々と声を張り上げた。
「総員に告ぐ!フォンロン、冥王星圏に向けて発進準備!」

艦全体に緊張感がみなぎる。

「波動エンジン始動!」
「波動エンジン、シリンダーへの閉鎖弁オープン!」
「波動エンジン内圧力上昇へ!」
「圧力上昇!」
「波動エンジン接続準備、フライホイール始動!」
フライホイールが回転を始める。

(ふう。あいつらバッチリじゃねえか。ま、俺の指導がいいからな。)
緊張した面持ちだった徳川は、安心したように小さく息をつく。
機関部の新人達のことを、古代同様、心配していたのである。

「波動エンジン点火5秒前!3、2、1、0――。」
「フライホイール接続点火!」

「フォンロン、発進!!」
(兄ちゃん、俺の初陣だ!見守っていてくれよ!!)
島次郎が、グイッ、とレバーを引いた。

兄によく似た、その背中を見守る古代。
(島。まさか、おまえの弟と共に戦うことになるとはな。)


地鳴りのように高まるエンジン音。
武者震いをするようにフォンロンが揺れる。
巨大なドームが開き、ゆっくりと艦首をもたげながらフォンロンは上昇した。

そして――。
悠然と漆黒の宇宙空間に滑り出して行く、フォンロン。

(雪、航、澪……。俺は必ず、必ず帰るからな……。)
古代は目深に被っていた制帽のつばを持ち上げると、真っ直ぐに前を見据えた。


「やっぱ、すげえよなあ!」
土方は思わず感嘆の声を漏らす。
「おいこら!気ィ抜くなよ、竜太郎。遊びに行くんじゃないんだぜ。」
徳川が、ばちん、と背中を叩く。
「いってえ〜!でも、機関長、やっぱ、この艦、すごいっスよ。」
徳川に発破をかけられて肩をすくめながらも、土方は胸の高鳴りを抑えることができなかった。

その背中を同期の吉岡が苦々しく見つめていた。
(土方君みたいな能天気なコが戦闘班のリーダーだなんて、世も末だわ……。)

「土方、徳川の言う通りだ。俺達は遠足に来ているんじゃないからな。既に戦いは始まっているんだ。これは訓練じゃない。実戦なのだということを忘れるな。気を引き締めて行け!」
「はっ!」
古代にまで戒められ、土方は、しょんぼりと自席についた。

(やれやれ。)
その姿に苦笑する古代。


「間もなく土星、遊動艦隊合流ポイントに入ります。」
吉岡が静かに告げた。

「艦長、スコーピオから入電です。パネル切り替えます。」
相原の報告に古代が立ち上がった。

主力戦艦「スコーピオ」の艦長が映し出され、さっ、と敬礼する。
「古代司令!我が遊動艦隊は、これより旗艦フォンロンに合流します。」

「こちらフォンロンの古代だ。厳しい戦いになると思うが、宜しく頼む。」


フォンロンは、艦隊を率いて、あっという間に土星を過ぎた。


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