死闘! 火星宙域 (前編)

敵の猛攻を受け、満身創痍の旗艦アンドロメダと火星圏防衛艦隊の前に、ワープしてきた旗艦フォンロンと遊動艦隊が現れた。

『こっ、古代司令、来てくれたのか!しかし……アンドロメダは足手まといだ。我々はもういいから地球へ――』
「アレクセイ司令!フォンロンの古代だ。諦めてどうするんです!!無駄死にすることはない。敵を引きつけている間、なんとか脱出を試みて下さい。」

古代率いるフォンロンの機動力に気圧されたのか、敵艦隊の統制が、やや乱れている。
それを見て取って、すかさず指示を出す古代。
「涼風、浜風の両艦は、アンドロメダと航行不能の艦を守りつつ、クルー救助に専念しろ!!冬月!!涼風・浜風を援護しろ!!それ以外の各艦に告ぐ!スクランブル・フォメーションをとり敵を引きつけろ!!」

古代の指示に従って、新たな対陣を敷く地球艦隊。

「土方、今言ったとおりだ!!ファルコンを出せ。敵が立ち直る前に畳み掛ける!!」
「はいっ!!フォンロン、全砲門開け!!ファルコン隊出撃!!」


格納庫――。

「勝呂!!」
「隊長!!俺、もう大丈夫ですから!!エディの分まで頑張ります。地球で待っている人達のためにね!!」
「よし!!気を引き締めてけよ!」
「誰に言ってンですか!!俺はエースですよ!!」
「その言葉、忘れんなよ!」

「ファルコン隊、発進!!」


激しい戦いとなった。
敵艦隊の将はかなりの手練れだと思われる。
これまでの戦闘に比べ、各艦とも苦戦している。

と、相原が嬉しそうに叫んだ。
「艦長、ビスマルクより入電。修理が済み次第、こちらに向かうそうです。」
古代は大きく頷く。
「こちらは苦戦している。なるべく急いでくれ――と連絡しろ!」
「はいっ!」

しかし――。
当初、優位に立っていた地球艦隊だが、火星艦隊を庇いながらの戦闘は、やや不利になってきた。

フォンロンにも大きな被害が出始めていた。
相次ぐ被害報告に、若い土方は焦りと苛立ちを隠し切れなかった。

『艦尾損傷!』
『右パルスレーザー半数、損傷!』
『第1砲塔、損傷!!』

「くそう!」
坂巻が思わず声を上げる。
『こちら第1砲塔!マニュアルに切り替えましたが人手が、人手が足りません!!誰か……戦闘班員…を――』
ぷっつりと無線が途絶える。

「おい!おい!どうした?返事をしろ!!」
悲痛な声で叫ぶ坂巻の背中に土方が声をかける。
「行って下さい。坂巻さん。」
「わかった!」
パッと飛び出して行く坂巻。

と――。
「私も行きます!!」
吉岡が、すくっと立ち上がる。

「大丈夫なのか?」
土方が目を丸くする。
「大丈夫よ。私、もともと戦闘科だもの。艦長、行かせて下さい。実戦経験はありませんが、砲術演習は充分、受けています!」
「艦長……。」
土方は古代を振り返り、判断を委ねる。
古代は深く頷いた。
「頼む。」
「はいっ!!」
返事と同時に、もう駆け出している吉岡。

同時に相原に指示を出す古代。
「相原!!吉岡の代わりを立てろ!」
「はい!こちら相原!通信班に誰か手の空いている者はいるか!メインブリッジの索敵を頼む!」
『チーフ。ケリーがそっちへ向かいます!!』
「了解。頼んだぞ!艦長、索敵席、ケリーが入ります。」
「わかった!」

一進一退の激しい攻防が続く。
今のところ、敵艦隊と地球艦隊は互角。

味方が合流するまで、ここは、なんとしてでも踏みとどまらねばならない。
古代は、ギリギリと奥歯を噛み締める。
(みんな、頑張ってくれ!!)

第1砲塔からの砲撃は、確実に敵を捉えていた。
どうやら吉岡の腕は、まんざらではないらしかった。
(やるなァ〜、吉岡のヤツ。俺も負けてらんないぜ!)
土方は、焦りと苛立ちから解放され、触発されたように、きびきびと動いた。


勝呂は圧倒的なテクニックで敵艦載機を次々に落としていく。
しかし、その飛び方は、まるで何かに憑かれたようだ――と水谷は思った。
(おまえの気持ち……分かるぜ、勝呂。だが、無理するなよ。俺はおまえまで失いたくないんだ。)
勝呂の気持ちが仲間達に伝播したのか、初戦とは明らかに動きの違うファルコン隊。
それぞれが絶妙なコンビネーションで、攻め、交し、守る。

そんなファルコンの激しい攻撃をかいくぐって、一機の小型機が火を吹きながらフォンロンめがけて突っ込んできた。

「うわあっ!!特攻してくるぞ!!」
「島さん、早く回避して――」
「むっ、無理だ!!」

フォンロンが大きく傾く。

(兄ちゃん、守ってくれっ!!)
祈るように操縦桿をグッと握り締める島!

激しく揺れる艦体。
「くそうっ!!やられるかよーっ!!」
歯を食い縛る島!

大きく激しい衝撃に見舞われるフォンロン。

「うわあーっ!!うがっ!!」
土方は自席から放り出されて、床に背中を強かに打ちつけた。
「ううっ、痛ェ〜……。くっそう!無茶なことしやがって!!」
あまりの激痛に呪いの言葉を吐く土方。

島の必死の操艦に直撃は、なんとか免れた。

しかし敵機は、それでも機体を引っ張り、第1砲塔を引っかけるようにして、爆発、四散した。
煽りを受け、大きく揺れるフォンロン。

「やばかったな。それにしても、さすがだな、次郎……。」
古代は島のテクニックに思わず感嘆の声を漏らす。


が――。
ふと見ると――。
第1砲塔が激しく炎上している。

「だっ、第1砲塔がっ!!」
みるみる蒼白になる土方。
(吉岡は……坂巻さんは……。)
すぐにでも飛び出していきたい気持ちを、ぐっと抑える土方。
(くそうっ、くそうっ!!ビスマルク、早く来てくれよ!!)

古代が立ち上がった。
「うろたえるな!すぐに体制を整えろ!!どうした!何をしている!手を休めるな!!」
思うように動かないクルーの若さに古代は奥歯を噛み締める。

「ひ、被害状況は?」
「第1砲塔使用不能!!パルスレーザー、左右共に損傷!」

「第1砲塔に救護班をすぐに向かわせろ!!」
うろたえる土方に代わって、そう古代が指示した時だった。

「艦長、スイマセン。俺――」
土方が、ぱっと飛び出して行った。

「土方ッ!!何処へ行くッ!!」
しかしもう土方の姿は無かった。
「あのバカ――!!」
古代は唇を強く噛み締めた。



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