冥王星空域、激戦突破! 唸れ、波動砲


「すげえな、この艦は。この分だと殆ど無傷で俺達の勝利だぜ。」
土方が感心したように呟く。
島は横目でチラリ――と土方を見やると苦笑いしながら言った。
「おまえは、いつも短絡的だよな。お気楽というか。そりゃ俺だってフォンロンの力は認めるけど、俺としては、どうもそれだけじゃないような気もする。ボラーについてはガキの頃、兄貴から聞いてたけど、話とは随分と違うような気がするんだよな。」
「そりゃそうですよ。ヤマトがボラーと戦った頃とは違うんですから。」
「それも踏まえて言ったんだが――。俺が言いたいのは、なんだかこの程度じゃすまないんじゃないかってことなんだけど。まあ、楽に勝利できればそれにこしたことはないからな。」
島は、そこで言葉を切ると、それ以上、話を広げずに前方を見据えた。

古代は黙って二人の会話を聞いていた。
(確かにフォンロンの性能はヤマトよりもずっと上だ。しかし……次郎の言うように、あのボラーが、こうも容易く落ちるとは……俺としても予想外だ――)


フォンロンとフォンロン率いる艦隊は、圧倒的な強さで、敵艦を次々と沈めていった。
勝機が見えて、意気の上がるメインブリッジでは、土方が鼻息も荒く古代に進言する。
「艦長!ここは一つ波動砲で一気に――」
「バカ野郎!調子に乗るな!波動砲ってのはな、撃ちゃいいってもんじゃないんだぞ。」
「は、はい。つい、勢いで――。」
「おまえは単純過ぎていかん!土方さんが泣くぞ!まったく、どいつもこいつも――。」
土方は深くうなだれ、古代は溜め息をついた。

「ファルコン隊、収容完了しました。」
「よし。ファルコン、そのまま指示があるまでスタンバっておけ!」
『了解!!』
古代は直接、水谷に指示を出した。

「吉岡。敵の動きは?」
「今のところ、追撃してくる様子はありません。残存の艦隊はどうやら後方に控えている巨大空母に向かうようですが。」
「そうか。巨大空母の正確な位置を教えてくれ。」
「はい。前方10宇宙キロ。右、40度です。」
「島!艦を2時の方向へ動かせ。そのまま前進。」
「了解!」
「吉岡、監視、しっかり頼むぞ。」
「はいっ!」

「あ!敵空母、動きます。どうやら、こちらの動きについて来ているようです。」
「そうか。」
古代は、頷くと腕組みをしたまま、目を閉じた。


膠着状態が、しばらく続いた。
イライラした様子の土方。
やや不安げな吉岡。

古代を信頼しているのだろう。
相原、徳川、坂巻、そして島は落ち着き払っている。

やがて古代が、ゆっくりと目を開ける。そして、静かだが、力強い声で指示を出した。
「よし。この位置での攻撃による内惑星及び周辺への影響は?」
「問題ありません。」
「そうか。土方!徳川!波動砲発射準備をしろ。」
「はいっ!波動砲への回路開きます!」
古代は徳川の背中を見ながら、彼の父、彦左衛門を思った。
(ヤツもすっかりベテランだな。なんだか徳川さんの背中を見てるみたいだ。)

「セイフティロック、解除。」
「距離6宇宙キロ。敵空母及び残存艦隊、急速接近してきます。」
「あっ!残存艦隊より超大型ミサイル発射!高速接近っ!」
「ま、間に合うんですか?艦長っ!」
「慌てるな!土方!」
土方は額の汗を拭う。

「距離4宇宙キロ!」

「はっ……波動砲、発射用意!」
「土方!力むなよ!」
「はっ、はいっ。ターゲットスコープ、オープン!」
ターゲットスコープがポップアップする。
(これだよ、これ。)
土方の頬が紅潮した。

「電影クロスゲージ、明度20。目標、敵、巨大空母と残存艦隊。距離、5000!」
「発射10秒前。対ショック。対閃光防御!」
ゴーグルをおろす一同。メインブリッジに緊張感が走る。
(落ち着け!落ち着け!)
土方は指先に祈りを込め、古代は、その若い背中を見つめた。
「――5、4、3、2、1、0!発射!」

猛烈な反動に艦橋が揺れた。と同時にパワーアップした波動砲の閃光は空間を切り裂くように、真っ直ぐに敵艦隊を目指した。
そして――。
光の矢が敵艦隊を抱き込んだように見えた、その刹那――。
辺りは巨大な閃光に包まれた。
若きスタッフ達は息を呑んで、その光景を見守る。

「す、すげえ。や、やったのか?」
土方が、かすれた声で小さく呟く。

やがて白い閃光が消えた。
同時に、そこに存在したはずの巨大空母と艦隊も、迫り来る超大型ミサイルも消滅していた。

「よっしゃあっ!」
土方は派手なガッツポーズを取る。
「やっぱ波動砲ってすっげえよなあ!!」
「調子に乗るな!誉められたことじゃない。」
古代に諌められて、土方は、またうなだれた。

眉を潜め、呆れ果てる吉岡。
機関長の徳川は、やれやれ――といった面持ちで首を振った。

そして古代も――。
やや疲れた表情で、凝り固まった首を左右に傾けてコキコキ鳴らせた。
(なんとかここを突破したが……こんな調子で大丈夫なのか?)

そんな古代を見て、相原は小さく笑った。
それに気づいて古代は艦長席を離れると、相原の傍らに歩み寄った。
「なんだァ、相原。俺の顔になんかついてるのか?」
「いや。艦長殿がコイツら相手にだいぶお疲れのように見えましてね。相変わらず苦労性ですよね。」
相原が肩をすくめながら笑顔で答える。
古代もつられて笑った。
「ハハ。まったく我ながら進歩がないなあって思うよ。どうも俺は沖田さんみたいにこう、どっしりと座っていられなくて。」
「いや、らしくていいですよ。どっしりと落ち着き払った古代進っていうのもなあ……。第1艦橋をウロウロ歩き回ってるのが古代進ってカンジで――」
「おいおい、なんだよ、それ。でも、ずっと変わらず同じポジションにおまえがいてくれると、ものすごく落ち着くよ。」
「なんだかんだ付き合い長いですからねえ、俺達。でも索敵席に奥さんがいてくれたら、もっと安心していられるでしょ?」
「バカ!相変わらず、クチの減らないヤツだなあ。そういうおまえこそ晶子さんのことで頭イッパイなんじゃないのか?」
「やだなあ。そんなのお互い様でしょ。」
「ちぇっ!」

ふと相原は真顔に戻る。
「ところで艦長……。さっきの次郎じゃないけど俺も何だか引っかかるもんがあるんです。艦長もそうなんじゃありませんか?」
「ああ。イヤな予感というか――このままでは済まない気がするんだ。」
「相原は深く頷く。しかし、すぐに笑顔を作ると穏かな声で古代に言った。
「いずれにしても、まだ戦いは始まったばかりですよ、艦長。休めるうちに休んで下さい。」
「ああ。」

(――ったく、相原のヤツ。最近、俺のことは何でもお見通しだな。まあ、雪には及ばないけどな。)
古代は相原の細やかな気遣いに心から感謝した。



冥王星空域での初陣を突破したフォンロン。
若いクルー達の殆どが、勝利に酔いしれていた。
一方で、フォンロンと遊動艦隊の各艦は、新たなる戦いに備え、修理と整備を始める。
そして、古代や相原ら歴戦の宇宙戦士達もまた、この勝利に一抹の不安を抱きつつも、次の戦いに向けて既に気持ちを切り替えていた。




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