復讐 −憎しみの少女−


シャーロットは、ゆっくりと意識を取り戻した。

(何が起きたんだろう。ああ、そうだ。車が飛んで……ひっくり返って……。あ!兼良さんと雪さんは……。)

シャーロットは、はっとなって上体を起こした。
きょろきょろと辺りを見回す。

ビルに突っ込み、まだ燃えているトラック。
そして――。
自分達が乗っていたジープが引っくり返っている。

(あっ!)
シャーロットは息を呑んだ。
少し離れたところに――兼良が横たえられていた。

よろよろと立ち上がって、歩み寄る。
傍らに跪いて、そっと触れてみた。

兼良はピクリとも動かない。
(兼良さん……まさか……。死んじゃったの?)

しかし、よくみると兼良の厚い胸板が小さく上下しているのがわかった。
(生きてる!よかった……。でも、雪さんは?)
シャーロットは思わず立ち上がると焦燥と不安の中で、雪の姿を求めた。


雪は――。
銃を構えて立っていた。

離れたところに誰かいる。
敵と思しき兵士。
やはり銃を持っているようだ。

二人の距離は徐々に縮まる。
どちらも身構えたままだ。

(どうしよう……。)

と、何故か雪は銃を収めてしまった。
しかし敵は銃を構えたままだ。

ややあって――。
(!)

閃光とともに銃声が乾いた空気を割った。
同時に、雪がその場に崩れるように座り込んだ。

しばしの静寂――。

まもなく、雪が上体を起こす。
今度は敵兵と思われる相手が崩れるように倒れ伏した。
見届けたように雪が、また倒れてしまう。

(どういうこと?)
シャーロットは、わけがわからず眩暈がしそうだった。

シャーロットは走った。

――あの人は、雪さんは死んでしまったのだろうか?
助けなきゃ。助けなきゃ。

シャーロットは不安を押し込め、冷静になろうと努めた。


**********************


雪は腹部を抱え込み、端座したような姿勢で前のめりに倒れていた。
生きているのか死んでいるのか……わからない。

そして――何故か敵兵が嗚咽している。


人の気配に敵の少年は、我に返り、はっとなって顔を上げた。

[あっ!?]
シャーロットはその顔に愕然とした。

彼は自分の母を撃った兵士だったのだ。
「どうして?今度は、この人を撃ったの?」

シャーロットに中に抑えようのない、激しい怒りと憎しみが込み上げた。
夢中で駆け寄る。

少年は、傷ついていた。
既に戦意を失っている彼は、身じろぎもせず、うつろな瞳でシャーロットを見上げた。

その姿がシャーロットには、むしろ不敵に見えた。
ふと、足元を見ると、少年が落としたレイガンがある。
それを拾い上げる。

シャーロットは氷のような笑みを浮かべて少年兵を見下ろした。
そして銃口を彼の頭に向けて構える。

少年兵の表情が凍りついた。

「あんた……。私といくつも変わんないガキじゃない!あんたみたなコが人を殺すなんて!母さんと諒さんを……返して!返してよっ!」
シャーロットの中で、押さえ込まれていた感情が一気に爆発した。

少年は、ガクガクと震えている。

「おまえなんか、おまえなんか死んじゃえばいいんだ!」
シャーロットは絶叫し、トリガーに指をかけた。

「撃つなぁーっ!」

同時に女の絶叫が耳に飛び込んできた。

シャーロットは声に驚き、狙いを誤った。
しかしそれでもレイガンから放たれた閃光は、少年の左肩を撃ち抜いていた。

「うがあーっ!うああああっ。あああああっ」!!
少年は肩を抑え、激痛に悶絶する。

「私は、私は……。」
シャーロットはレイガンを握り締めたまま、ただ呆然と立ち尽くしていた。



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