戦士と女神 5
仕事が一段落した桂木は、ベースで休む雪の元に走った。
桂木は、雪の枕元に歩み寄り、ややバツが悪そうに言った。
「明日、俺と沢野であなたを病院まで送ります。」
「そう……。かえって迷惑かけちゃったわね。」
すまなそうに微笑む雪は、いつも通り、やさしく穏やかだった。
「迷惑をかけたのは俺ですよ。あれから……少し考えてみました。俺は何故、ここにいるのかって。うまく言えないんですが…こんな俺にも守りたいものがある。守りたい人達がいる。だから……歯を食いしばってここまで来たんだ。俺は俺のできることを全力を尽くしてやろうと思っています。」
「桂木クン……。私、キツイこと言っちゃったけど――」
雪の言葉を、桂木は微笑んで遮った。
「いいんです。森さんのおっしゃったことは、正しいと思います。俺はもう少しで自分を見失うところでした。俺の方こそ泣き言、言ってしまって申し訳なかったです。」
深々と頭を下げる桂木に、雪は、いやねえ――と言って苦笑した。
「でも、もし、あなたがまた躓いてしまったら瀬田クンに相談するといいわ。彼、ああ見えて私なんかよりも、ずっとやさしいのよ。」
「はい。わかっています。瀬田隊長のことは、俺、心から尊敬してますから。」
桂木が更に何か言おうとした時、前田が飛び込んで来た。
「隊長、敵襲です!!残存部隊と思われますっ!!」
「なんだと!?くそっ!森さん、俺、行きます!」
桂木は、厳しい表情に戻ると、ぱっと身を翻し、表へ出ようとした。
ドスッ!
桂木は、勢い込んで中へ入って来た誰かにぶつかり、尻餅をついた。
「いってえ!何処見てやがんだ――って、あ!隊長っ!」
「おおっと!スマン、スマン!」
瀬田だった。
そして、その後ろから、ひょいと顔を出す沢野。
「桂木!今から森を連れて病院へ行け!この先、どうなっちまうかわからんからな。後は俺が引き受ける。」
「は、はいっ!」
瀬田は、うむ、と頷くと、今度は雪に歩み寄り、彼女の顔を覗き込んで、念を押すように言った。
「いいか、森!無茶するなよ!!」
「言われなくても、そのつもりよ。」
雪は笑って言い返す。
瀬田は肩をすくめて苦笑した。
「ったく!クチのヘラねえ女だ!!桂木、沢野、頼むぞ!!」
「ハイッ!!」
直立不動の姿勢で返事をする若い二人を微笑みながら見つめる雪。
瀬田は、よしよし――と頷いて出て行こうとした。
その背中に向かって雪が呼び止める。
「瀬田クン。」
「なんだ?」
「ごめんね。かえって迷惑かけちゃって。」
すまなそうな雪に瀬田は、にやっ、と笑って言った。
「バカ、気にするな!おまえがいなかったら、こいつら全滅してたかも知れねえんだ。」
「大袈裟よ。」
肩をすくめる雪。
「いや、ホントさ。おまえはつくづく大した女だよ。惚れちまいそうだぜ!」
にやり、とする瀬田。
「あら?金髪美人がお好みなんじゃなかった?」
切り返す雪。
瀬田は天井を向いて、ガハハと豪快に笑った。
「バカ野郎!つってんじゃねえ!それより、森。何があっても、つまらん覚悟だけはすんなよ。わかったな?」
今度は、そう言って真顔で雪を見つめる。
「ええ。わかったわ。ありがとう。」
雪は軽く目を伏せ、素直に頷いた。
「身体、早く治せ。おまえと古代とチビども連れて、またピクニック行こうぜ!!」
「いいわね。じゃあ、その時はまたジェインにゴージャスなお弁当を作ってもらおうかな。」
「ああ!嫁サンに言っとくよ。」
瀬田は茶目っ気たっぷりにウインクを送ると、駆け出した。
そして――。
雪は桂木と沢野に支えられながらジープに乗り込んだ。