バレンタイン・嘆キッス?
<其の参>
涼を背後から呼び止めたナゾの人物……。
それは――。
この年末年始で5キロ太ってしまった太田健二郎だった。
「うわ!!ケンちゃん、あんたどこから――」
ぬぼ〜っと、しかもにんまりと立っている太田。
涼は、思わず後退りした。
「これでキミも、あいつら見てる俺の気持ち、分かっただろ〜?」
腰に両手を当て、何やら得意げな太田。
涼は、げんなりと太田を眺めていたが、力なく笑って言った。
「……。なるほどね。あの二人、あんたのバカ食いの原因の一つでもあるわけだ?ああ、分かるとも。ワタシも今日は心底イヤになったぞ!でえい!なんでもいいや。飲み行こ、飲みっ!!」
涼は、つい勢いで太田を誘ってしまった。
再び、にまっ…とする太田。
げっ!?――と、たじろぐ涼。
「っしゃあ!!んじゃあ、食うぞおおおおお!!」
太田は空に向かって嬉しそうに吼えた。
「飲もうって言ったんだよ!!飲もうって!!」
涙目の涼。
と。
その時!!
「俺も行くぞ。神倉クン!!」
再び背後から、男の声が……。
今度は一体!?
しかし、これでまた話を引き伸ばすのもどうか――と、さすがに作者も思うので正体を明かしてしまおう!
声の主は、不敵な笑みを浮かべる、真田志郎であった。
「げ!げげっ!!し、しろうちゃん……。ど、どっから湧いて出たのっ!?」
振り返った涼は、仰け反って驚いた。
「こんなこともあろうかと思ってな〜♪いい飲み屋を予約しておいた。俺は分かるぞお。分かるりすぎるほど分かるぞ、おまえの気持ち。うんうん。よしよし。あいつらのお守は疲れるからなあ。」
何やらひとりで楽しげに頷く真田
蒼褪めるしかない涼。
「さ…さなだしろう、あんたっていったい……。なんか私、ビョーキになりそう。ああああああ。大嫌いだ。大嫌いだ。大嫌いだあああああ、ヤマトの元クルーなんてええええええ!!!!」
涼は、暮れてゆく夕空に向かって(心で)叫ぶのであった。
次回、居酒屋・飲んだくれ編――乞うご期待! (……に答えられなかったらごめんなさい!)